相続の豆知識(検認~遺言書を見つけたら)

Q.父が亡くなった後に、遺言書を発見しました。
どうしたらよいでしょうか。

遺言書を見つけたら

被相続人が死亡し、遺言書(自筆証書遺言など)を見つけた場合は、遅滞なく、家庭裁判所に提出して、検認手続きを受ける必要があります(民法第1004条1項)。
例外として、公正証書遺言については、公証人により作成され、原本が公証役場に保管されますので、偽造や変造のおそれがないため、検認が必要ありません(民法第1004条2項)。
「遺言書」と書かれた封筒を発見したら、開封したくなるかもしれませんが、すぐに開封してはいけません。封印のある遺言書は、家庭裁判所で行われる検認手続きにおいて、相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法第1004条3項)。

Point

遺言書に保管者がいた場合も、保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認手続きを受ける必要があります。

遺言書が封筒に入れてあっても、封印がなければ、家庭裁判所における開封手続きは必要ありませんが、封印のない遺言書や封のされていない遺言書も、検認手続きは必要です。
封印のない遺言書や封のされていない遺言書も、そのままの状態で家庭裁判所に提出しましょう。

2020年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管することができる制度が始まりました。
この制度により自筆証書遺言を保管した場合は、検認は必要ありません。

検認とは

検認とは、相続人に遺言の存在やその内容を知らせるとともに、家庭裁判所において、相続人の立ち会いのもとで遺言書を開封し、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを明らかにして、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。

Point

遺言書の検認は、あくまで検証ないし証拠保全の手続きにすぎないため、遺言書に書かれている内容そのものの有効・無効を判断するものではなく、検認をしたからといって、遺言書が有効と確認されるわけではありません。
したがって、検認をしたけれども、遺言書に不備があり、遺言書としては無効ということもありえます。
そのため、検認を受けた遺言書に関しても、遺言書の無効確認訴訟を提起することが可能です。

遺言書を開封してしまうと

遺言書を、家庭裁判所に提出することを怠り、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所の外で開封したりすると、5万円以下の過料に処せられる可能性があります(民法第1005条)。

Point

もし、封がされた遺言書を勝手に開封してしまったとしても、それだけで相続人が相続権を失うことにはなりません。遺言書を開封したというだけでは、遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者(相続人の欠格事由・民法第891条)にあたるとは限らないからです。
しかし、後々のトラブルにならないように、もし、封印のある遺言書を開封してしまった場合は、早めに他の相続人に知らせて、すぐに家庭裁判所で検認手続きをしましょう。

検認手続きの流れ

①検認の申立て

検認の申立人は、遺言書の保管者又は遺言書を発見した相続人です。
検認の申立先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所です。

②検認期日の通知

検認を申し立てると、家庭裁判所は、相続人に対して、検認期日通知書を送付して、検認の期日(検認を行う日)を通知します。
これにより、遺言書があったことを知らなかった相続人も、遺言書が存在することを知ることになります。

③検認の実施

検認期日には、申立人が遺言書を提出し、相続人らの出席のもと、遺言書が開封され、遺言書の日付、筆跡、署名、内容などの確認をし、その結果が検認調書に記載されます。

④検認済証明

検認が終わった後は、検認済証明書発行の申請をすることになります。
検認済証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。
遺言の執行をするためには、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要となります。

⑤検認済の通知

検認に立ち会わなかった申立人以外の相続人には、裁判所から送られてくる検認済通知書により、遺言を検認した旨が通知されます。

Point

検認期日には、申立人は、遺言書、申立人の印鑑、そのほか裁判所の担当者から指示されたものを持参します。
申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは、各人の判断に任されており、全員がそろわなくても検認手続きは行われます。

検認の申立てに必要な費用

  • 遺言書(封書の場合は封書)1通につき、収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(相続人の数や裁判所によって異なります)

検認の申立てに必要な書類

  1. 申立書(書式は、裁判所のホームページからダウンロードできます)
  2. 標準的な添付書類

標準的な添付書類は、以下のとおりです。

共通して必要なもの

  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本

相続人に第2順位相続人がいる場合

相続人が遺言者の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)の第2順位相続人の場合、次の書類が必要です。

  • 遺言者の直系尊属で、死亡している方がいらっしゃる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

相続人が不存在の場合、相続人が遺言者の配偶者のみの場合、相続人に第3順位相続人がいる場合

相続人が不存在の場合、遺言者の配偶者のみの場合、遺言者の(配偶者と)兄弟姉妹等の第3順位相続人である場合であれば、次の書類が必要になります。

  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合、そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

同じ書類は1通で足ります。

もし、申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、その戸籍等は、申立後に追加提出することでも差し支えありません。

戸籍等の謄本は、戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。

審理のために必要な場合は、追加書類の提出を求められることがあります。

相続に関する問題は、弁護士にご相談ください

遺言書について不安なことがあるときには、早めにご相談ください。

  • 検認手続きを弁護士に代理で行ってもらいたい。
  • 複数の遺言書を発見した。
  • 遺言書の内容に納得がいかない。
  • 遺言者が遺言書作成当時、遺言を作成できる状態であったか疑わしい。

相続に関する問題は、弁護士にご相談ください。

(記事監修・弁護士伊藤康典)

記事監修

弁護士 伊藤康典

横浜みなとみらい法律事務所代表弁護士。
東京大学法学部卒業。平成16年度司法試験合格。都内法律事務所勤務を経て、2014年、横浜みなとみらい法律事務所を設立し、所長(2020年現在、弁護士6名)。

個人事業主、中小企業、上場企業の顧問業務のほか、交通事故、相続(遺言、遺産分割、遺留分減殺)や成年後見、建物明渡し等、個人の方からのご依頼にも注力しています。依頼者に待ったをかけるのではなく、依頼者の背中を押す弁護士でありたいと思っています。