相続の実務(寄与分の確定-療養看護型-)
Q.母が亡くなりました。父は既に他界しているため、相続人は私(長女)と兄(長男)のみであり、母の遺産には自宅と預貯金があります。
私は、母と同居し、認知症により要介護3の認定を受けた母の食事・排泄・入浴の介助などの介護を、約5年間にわたり無償で行ってきましたが、兄は母の介護には全く関与していませんでした。
遺産分割にあたり、私が母の介護を続けてきたことを考慮してもらい、兄よりも多く遺産を取得することはできないのでしょうか。
寄与分制度(療養看護型)
共同相続人の中に、被相続人の療養看護等によって、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした人がいる場合、法律で定められた相続分どおりに遺産を分けることにすると、相続人間で不公平が生じることになります。
この不公平を解消するため、民法904条の2は、特別の寄与をした相続人について、遺産の中からその寄与に相当する額(寄与分)を相続分に上乗せして取得させることを認めています。
質問のケースのように、相続人が被相続人の介護を行ったことにより、被相続人が職業介護人に支払うべき費用の支出を免れ、その結果として相続財産が維持された場合は、「療養看護型」の寄与分として扱われます。
寄与分が認められるための要件
もっとも、介護を行ったという事実があれば、当然に寄与分が認められるわけではありません。療養看護型の寄与分が認められるためには、親族として通常期待される程度を超える「特別の寄与」であることが必要であり、具体的には、①被相続人が介護を必要とする状態にあったこと(療養看護の必要性)、②介護が無報酬又はこれに近い状態で行われたこと(無償性)、③介護が相当期間(実務上は1年以上とされることが多いです。)に及んでいること(継続性)、④介護の内容が片手間なものではなく、相当な負担を要するものであること(専従性)といった要素から判断されます。
療養看護の必要性については、介護保険における要介護度が重要な資料となり、実務上は、被相続人が「要介護2」以上の状態にあることが一つの目安とされています。
他方、完全看護の病院に入院している被相続人のお見舞いに通ったり、通院に付き添ったりした程度では、親族として通常期待される範囲内の行為として、寄与分は認められにくいと考えられています。
寄与分の評価方法
療養看護型の寄与分の額は、一般に、「報酬相当額(日当)×介護日数×裁量割合」という計算式によって算定されます。
報酬相当額は、介護保険における介護報酬基準を参考に、被相続人の要介護度に応じて評価されます。もっとも、同基準は介護の資格を有する職業介護人への報酬を前提としているため、扶養義務を負う親族による介護であること等の一切の事情を考慮した調整(裁量割合:通常は、0.5~0.8程度の間で適宜修正されます。)が行われます。また、デイサービスやショートステイを利用していた期間は、介護の実体がないものとして、介護日数から除かれることがあります。
質問のケースでは、要介護3の認定を受けた母の介護を、約5年間にわたり無償で行ってきたとのことですので、特別の寄与として寄与分が認められ、法定相続分(2分の1)に寄与分を上乗せした遺産を取得できる可能性があります。
弁護士にご相談を
介護は、家庭内のいわば閉ざされた空間で行われることが多く、その実態を客観的な証拠によって明らかにすることは容易ではありません。
そのため、寄与分を主張するにあたっては、要介護認定に関する資料、介護サービス利用票、介護日誌などの客観的な資料を収集し、当時の被相続人の心身の状況と、実際に行った介護の内容を具体的に裏付けていくことが重要になります。
遺産分割の際に介護の苦労を適切に反映させるためにも、どのような資料を集めればよいかを含めて、専門的な知識を有する弁護士にご相談いただければと思います。
(文責・横浜みなとみらい法律事務所)

